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エキスパートミーティング in 九州

春のエキスパートミーティング ― クラフト、イノベーション、ビジネス

4月5日から9日にかけて、在日オランダ王国大使館とダッチカルチャーの招聘によりオランダからの視察団が長崎、福岡を訪れました。この訪問は、芸術的、経済的、社会的、文化的な目的のためにクラフトの保存・発展に努める組織クラフト・カウンシル・ネーデルランドの協力で実現したものです。この九州旅行のハイライトとも言えるのが、2016年4月7日に福岡で「オランダ&九州―クラフト、イノベーション、ビジネス」と称し、オランダ、九州、東京からの様々な専門家の参加のもと行われたエキスパートミーティングです。

伝統工芸と高齢化
日本の伝統工芸家との出会いの中でオランダの専門家たちは、日本の伝統工芸の多様性や細部へのこだわりに驚嘆しました。クラフト・カウンシル・ネーデルランド代表のマリオン・ポールトフリート氏は、工芸の文化がほぼ途絶えてしまったオランダと比べ、日本の伝統工芸は今日も人々の生活に根付いている、とブログに記しています。

九州のすべての県には独自の伝統工芸が存在します。九州ちくごのものづくりを専門とするうなぎの寝床の渡邊令氏は「九州には、外の人間が非日常を楽しみに来る「観光」以上に、地元での生活と生業がきちんと残っており、九州という枠で見た時に、その多様性によって、地産地消ができるというサステイナブルな環境が、一つの魅力だと思っています。」と九州の魅力を説いています。一方でオランダの専門家たちは、日本でも同様に伝統工芸品の販売が落ち込んでいること、職人たちの高齢化が深刻であること、それにより伝統工芸の知恵と技術が失われようとしていることを目のあたりにしました。「私たちは驚くほど手厚く迎えられ、30,40,50年と同じ仕事に就いている彼ら(職人)の生活を垣間見ることが出来ました。長年のキャリアを積んだこれらの職人と話をする中で、田舎に引っ越し、一つの専門職に人生を捧げてくれる若い後継者をどのように見つけるか、というのが重要なテーマとなりました。[…]5年、10年経つと、多くの工房が独自の知識や文化遺産とともに滅びてしまいます。彼らがしごと、職場、作品と一体となって生活しているところを見ると、近いうちに後継者を見つけるというのがほぼ不可能な課題であることを思い知らされます。」と、テキスタイルミュージアムのヒールチェ・ヤーコブス氏はブログに綴っています。高齢者層がインターネットをほとんど、あるいはまったく使用しないということが、職人を見つけることが困難である大きな要因の一つであり、これは伝統的な方法で仕事をし続けているオランダの職人も同様です。専門家たちは旅を続ける中で、「どのような方法で伝統工芸を活かし続けられるか?」という問いにそれぞれ考えをめぐらせていました。

イノベーションと未来
このミーティングによって、日蘭双方が「伝統工芸を生かし続けるためには革新が必要である」と感じていることが浮き彫りになりました。日本人の質の高いの職人技および素材や生産の知識・技術、そしてオランダ人の柔軟性、自発的な姿勢、コミュニケーション能力、自由な発想という特性や技能、知識を活かすことで、両国が互いを補い、強めるパートナーとなり得ることを専門家たちは確信しています。
マリオン・ポールトフリートは「今回の日本滞在は、オランダ人参加者にとって日常から離れて知識交換や協力の可能性について話し合う、またとない機会となりました。」と感想を述べています。スタディーツアー終了後、視察団は多くのアイディアやインスピレーションと共に帰路につきました。来る夏にはヒールチェ・ヤーコブスの招待で、テキスタイルミュージアムにて会合が催され、オランダの参加メンバーとダッチカルチャーが今回の実りある旅によって生まれた新しいプロジェクト案等について話し合います。

オランダの視察団メンバー
マリオン・ポールトフリート(クラフト・カウンシル・ネーデルランド代表)
ヒールチェ・ヤーコブス(テキスタイルミュージアム ミュージアムディレクター)
ユルン・ファン・デン・アインデ(ArtEZ芸術アカデミー講師)
シャルロット・ランズヒール(コル・ウヌム代表)
中條永味子(Japan Cultural Exchange代表/MONO JAPAN

日本の参加者
池田美奈子(九州大学
三木悦子(佐賀県立有田窯業大学校
秋元 友彦(株式会社ロフトワーク
浜野貴晴(佐賀県窯業技術センター
藤原友子(九州陶磁器文化館
馬場匡平(有限会社マルヒロ
白水高広(うなぎの寝床
志岐宣幸(佐賀県 Arita 2016/プロジェクト

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